若き後輩たちへ

なんかね、若き同僚達に先輩ヅラも先生ヅラもするつもりなんてないの。

でもね、先日の日本音楽コンクールの表彰式で講評なんぞを求められたりすると、自分がいつのまにか公の場で責任を持って発言せねばならない立場になってしまったんだな、と思い知らされたのです。

そんなわけでこれからガンガン活躍してゆく若き後輩たちが、今後不利益を被ることがないよう、2つだけ助言を。

1、劇場入りすることをSNS も含めて公の場で「小屋入り」と言わない。

昔々の「芝居小屋」からの言い回しであることはわかるけど、規模の大小に関わらず、自分が演奏させてもらう劇場を矮小化して小屋呼ばわりってのは、先方に失礼だよ。

自分の息子を「ウチの愚息がお世話になりまして」とは言っても、「お宅の愚息が」とは言わないじゃん。「つまらないものですが」って差し出された贈り物を「つまらないものをありがとう」って言いながら受け取ることはないじゃん

「小屋入り」はあくまでも仲間内の符丁だから。劇場スタッフに、「明日10時に小屋入りします」とか、口が裂けても言っちゃダメよ。

2、ドレスのスカートを持ち上げない。

毎年コンクールの時期になると恒例の記事みたいになってしまっているけど、ドレスのスカートを持ち上げちゃダメよ。

貴族の館で生まれたオペラ、および西洋藝術音楽を生業とするからには、その衣装だって原則をおさえておかんといかんですよ。

ちょうど令和になる際に、饗宴の儀とかがあったじゃない。ネットの拾い物写真だけど、参列された国賓の、ほんまモンのヨーロッパ貴族が、フルレングスのドレスをどう着こなして、どう歩いているか見てよ。百聞は一見にしかず。

 
下着であるパニエをボヨンボヨン見せながら、布団を持つみたいにスカートを抱えて登場した瞬間に、舞台人としての格がガクンと下がるよ。

ポタージュをズルズル啜るマナー講師が語るエチケットに説得力なんてないじゃん。

皆さんの今後のご活躍を心から祈っています。

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